track03-kojimakogei track 03 小島工芸

創業132年の老舗メーカーが守り続けているもの

小島工芸対談写真

2018年9月某日に小島工芸本社で行なわれた、小島勝利社長と弊社代表・宮島一郎によるトップ対談の模様をレポート。両社長は10年来のお付き合い。対談前には共通の趣味である剣道についての近況報告でひとしきり盛り上がっていました。創業132年という長い歳月を経てなお変わらない、4代目社長のものづくりに対する真摯な姿と熱い思いに迫ります。

小島工芸 PROFILE

東京都江戸川区に本社を置く、関東では数少ない老舗の木工家具メーカー。1886年(明治19年)に、江戸指物師だった初代の小島兼吉が浅草で箱火鉢を製造・販売したのがはじまり。代表製品は書棚、デスク、システムベッドなど。国内生産にこだわりを持ち、安心と安全、健康、環境への配慮から、F☆☆☆☆の基準を満たした資材・塗料・接着剤を使用している。茨城県に自社の製造工場があり、工場と本社にはそれぞれショールームが併設している。

注:指物…さしもの。釘などの接合道具を使わずに、木と木を差し合わせて作られたタンス・長持・机・箱火鉢などの家具のこと。指物をつくる木工品の専門職人を指物師という

目次

家具業界のトレンドは既製品からオーダー品へ

小島工芸の小島勝利社長

宮島:2018年も残すところわずかですが、上半期を振り返っての所感は?

小島:最近は底値安定の状態が続いており、大きな変化の波は感じません。ただし細かく見ていけば売場の縮小やスクラップ優先の小売店様は売上的に厳しいようです。反面、攻めているところもあり、スクラップしながら新店をオープンしたり、催事に積極的なところは伸びているという印象です。

宮島:攻めは最大の防御とも言いますが、商売のスタンスとして攻めの姿勢、時代に対して果敢にチャレンジしている企業が結果を出しているということでしょうか。

小島:そうですね。従業員が力を合わせて新しいイベントや事業を展開している企業は、厳しいながらもきちんと結果を残しています。苦しいからといって二の足を踏んでいるようなところはどんどん衰退していっているように思いますね。

宮島:各社、時代の変化を乗り越えることが必須となるわけですね。そのような状況のなか、家具業界の動向についてはどのようにお感じですか?

小島:家具業界は、特注家具と既製家具とに大別されます。両者の明暗ははっきりしており、特注家具は売上を大きく伸ばしています。当社も所属している東京都家具工業組合のメンバーの多くは特注家具のメーカーで、とくにホテルやビルの内装受注は堅調です。一方、当社のような既製家具の市場は全体的にパイが縮小しています。

小島工芸社長対談の様子

宮島:既製家具メーカーの御社が、軸足を特注家具に移していく可能性も?

小島:その選択肢も考えています。キーワードは「オーダー」です。当社の製品はサイズが決まっていますが、設置場所に合わせて1センチ刻みで高さを変えられるなどのオーダー要素を取り入れることで、特注家具の市場に参入しつつあります。

宮島:では、既製品の家具における競合他社との差別化については?

小島:「耐震」と「国産」ですね。日本は地震大国ともいわれるほど地震が多い地域ですから、耐震対策は大きな課題です。当社は耐震家具のパイオニア企業という自負もありますので、耐震に傾注した製品開発を常に行なっています。

宮島:時代の大きな変化のひとつに「少子高齢化」があげられます。御社では学習机やシステムベッドなどキッズ向けの家具を展開されていますがその辺りはいかがですか?

小島:学童数が減少し100万人を切っている現状において、縮小するパイの取り合いが厳しくなっています。しかしながら当社が目指す「値段に振り回されない国産で良いもの」を求める消費者は確実にいらっしゃいますので、今後もその方針は変えずにものづくりを続けていきたいと考えております。以前はお子様の成長に合わせて天板の高さが上下する机を製造していましたが、現在は耐震・耐久性を重視した完成品の机にシフトしています。

2019年10月の増税をピンチと見るか好機と捉えるか

宮島:来年10月には消費税が10%に引き上げられます。消費者からすると1割の税金負担には大きな抵抗感があると思われますが、これに対してどのような対策を?

小島工芸のデスク(東京ショールーム館内)

小島:これまでに経験した3度の消費税率の引き上げ(注:0→3%→5%→8%)を踏まえますと、一過性の駆け込み需要とその後に冷え込みがくることは想定しています。ただし過去3回と今回の大きな違いは、増税のタイミングにあると思います。これまでの引き上げ時期は4月でしたが今回は10月です。10月は学習家具の販売が本格化する時期に当たります。こうした需要の高まりに合わせてイベントやキャンペーンなどの施策を強化することで、駆け込み需要後の落ち込み幅の緩和が可能ではないかと考えています。

宮島:ピンチをチャンスに変える、発想の転換ということですね。増税と並んで消費に大きな影響を及ぼす昨今の要因に、配送費の値上げや大型品の個人宅配送のサービス廃止、原材料の高騰があります。

小島:確かに全般的にコストは上がっており、その度に社内でコストダウンと効率化を図っています。限界とまでは言いませんが、厳しい状態であることは否めません。とくに今回の配送費の値上げの衝撃は非常に大きく、取引終了の申し入れがあった外注先もありました。
今後は自助努力を続ける前提でありながらも、値上げの方向にシフトせざるを得ない時期に来ていると感じます。実際、今秋に一部製品の値上げを行ないます。とはいえ闇雲に値上げはせず、原材料や原油価格の変動を注視し、データに基づいて実施してまいります。

「棚物家具」がこれからの家具業界をリードする!?

宮島:我々が捉えている業界データからは、御社の代表製品である書棚など箱物家具はマーケットが縮小している現状が読み取れます。御社があえて箱物の製造にこだわる理由は何でしょうか?

小島工芸の棚物家具(東京ショールーム館内)

小島:まずお伝えしたいのは、書棚は正しくは「棚物家具」というカテゴリなんです。箱物家具はおもに洋服ダンスなどの家具を指します。
当社では、本棚・書棚は今後の需要が見込める製品ととらえています。先日も、ある小売店のオーナーさんから「遠くない将来、小島工芸の時代がくるかもしれませんね」と言われました。というのは、政府が推進する働き方改革の一環で、在宅勤務のスタイルが増えれば、自宅にデスクや棚が必要になるからだと。
また、すでに当社の書棚をお使いのお客様からは「うちはワイシャツの小売店で、小島工芸さんの書棚を、商品を展示するのに使っているんです」というお話を伺い、思いもよらない使用方法に驚きました。
「書棚」とイメージを一括りにせず、在宅勤務という新しいシチュエーションや、マルチに使える棚の開発など、市場縮小どころか新たな発展の可能性がまだまだあると見ております。

小島工芸社長対談の様子

宮島:お客様の声を大切にし、耳を傾けて製品開発を行なう。ものづくりの基本であり核となることですね。

小島:まさしく「現場あっての技術革新・製品開発」だと思います。机の前でどんなに頭をひねっても良いアイデアは生まれません。私自身、表に出るのが好きで小売店さんを見て回って市場調査をしたりするんですが、「こういう色が・サイズが・機能が流行っている」というのは、現場でしか取れないデータですからね。販売会でうちのスタッフがどのような接客応対をしているのか、それに対するお客様のリアクションなども本当に勉強になります。

ものづくりのこだわり「健康・安心・安全」

宮島:創業132年の長い歴史を重ねてきた家具メーカーとして、時代や社会が変わっても守っていきたいものとは?

小島:ものづくりに対するこだわりを持ち続けること、言い換えるならば「健康・安心・安全」な製品の提供です。小島工芸の製品をお客様に使っていただき、かつ喜んでもらえること。作り手が満足しているだけではだめなんです。
国の政策のひとつに「ものづくり補助金」があります。当社は2016年と2018年に採択され、1度目の採択で開発した国産のデスクが、間もなく市場に出せるところまできました。子供から大人まで使える工夫を凝らしたデスクなので、ぜひ注目していただければと思います。
家具業界に限ったことではありませんが、ヒット製品が生まれると必ずモノマネが出てきます。当社の「ボンフック」は2009年に特許を取得しました。知的財産を守りオンリーワンの製品開発を常に心がけていきたいですね。

エポックボード

エポックボード

多彩な種類の収納棚を、自分のイメージに合わせて組み合わせられるのが大きな特徴。棚板D260mmタイプは取り付け方が垂直・傾斜・水平の3パターンあり、シーンに応じた見せる収納が可能。

転落防止補助金具「ボンフック」

2009年 特許取得済
転落防止補助金具「ボンフック」

棚の側面や棚板のダボ穴に取り付けて、地震発生時などに収納物が落下するのを抑制。破損被害や落下物によるけがのリスクを軽減する。

宮島:130年以上続いてこられた、小島工芸の強みは何だとお思いですか?

小島:先にも申し上げた通り、ひとつは国産のものづくりです。もうひとつは特定企業の傘下にないため、自由な発想で主体性のあるものづくりができることですね。

社会人歴3年半で老舗の社長業に就任。30年目にして思うこと

小島工芸

宮島:長い歴史の中には苦しい時期もあったかと思います。

小島:会社は私で4代目になります。小島工芸としても、私自身の人生においても最大のターニングポイントは先代社長である父親の急逝でしょうか。1985年に大学を卒業し小島工芸に入社。88年の12月に先代が亡くなりました。

宮島:元号が平成になったのは89年の1月ですから、昭和が終わる直前ですね。

小島:入社して3年半、先代のかばん持ちのようなことはしていたとはいえ、まさに青天の霹靂でした。社長業に就任して今年でちょうど30年ですが、今振り返ってもあの修羅場をよく乗り越えられたなと思います。
もうひとつは2011年の東日本大震災ですね。地震発生当時はちょうどここで催事を行なっていて、ショールーム内の製品の7割が転倒しました。茨城の工場ではダクトが落下し、4月の入学シーズンで出荷直前だった製品もダメになりました。家具は繊細なので、地震によって生じたわずかな床の歪みも機械が拾ってしまい、仕上がりに影響してしまうんですね。果たして操業再開できるのかと思案したものですが、多少の欠品を出したものの、従業員一丸となって復旧できました。
乗り越えられた今だから言えることですが、こうした思いもよらない事態の経験を経て、社長として鍛えられたのかもしれません。それから、地震の翌日に宮島社長から安否を気遣うお電話を頂戴したのは大変心強かったですよ。

宮島:当時の混乱ぶりは相当でしたからね。私自身も、会社の代表の立場で震災やリーマンショックなどを経験し、経営危機に瀕する局面もありましたが、それらを乗り越えるたびにある種の強さを身に付けてきたように思います。

宮島:最後に、小島工芸から消費者に伝えたいことは?

小島:ずばり「良いものが結局お買得です」。小島工芸の製品を見て、触れて、使っていただければ、海外製の組立て家具にはない、国産の完成品家具の質の高さと丈夫さを体感できると思います。

フォームマットレス「プリモ」

フォームマットレス「プリモ」

小島工芸オリジナルの国産マットレス。二段ベッド「ラークUP」「アンジュEX」に対応。優れたバネ特性とクッション性を備えた高弾性フォームによって、睡眠中の寝返りの打ちやすさをサポートする。

二段ベッド「エリア」

二段ベッド「エリア」

ツートンカラーが印象的なベッドフレーム。子供の健やかな眠りと成長に適した硬さで設計されたエアウィーヴのマットレス「エアウィーヴKIDS シングル」にジャストフィット。

小島工芸社長対談での握手

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