track02-showanishikawa 家具インテリア業界 leader's voice| track 02 昭和西川

快眠とは「体と脳、そして心が健やかに眠ること」

昭和西川社長との対談

2018年8月某日、昭和西川本社にて行われた多田昌且社長と弊社代表・宮島一郎によるトップ対談。経営統合など業界再編で揺れる寝具業界で、3年連続増収を達成している企業のリーダーが語る、リアルな声をお伝えします。

昭和西川 PROFILE

1566年に西川仁右衛門(初代甚五郎)が近江国(現在の滋賀県)で蚊帳や生活用品の行商を開始した「西川甚五郎商店」に端を発する。
1942年、企業整備令により同商店の製造部門として「昭和寝具工業株式会社」を設立。1968年、業務規模の拡大に伴い「昭和西川株式会社」に商号変更。
快眠寝具の販売を通して、良質な眠りの提供と消費者の健康促進を目指して現在に至る。1971年に発売した「ムアツふとん」は同社のロングベストセラー商品。

目次

新たな販売チャネルの開拓により3年連続売上増

昭和西川社長対談風景

宮島:多田社長は長年に渡って寝具業界一筋でご尽力されています。

多田:高校を卒業し、京都西川に入社しました。当初は配送センターの倉庫に配属されました。その後、営業部門に転籍し、35歳で執行役員、36歳で取締役、38歳で常務、39歳で専務を歴任しました。45歳で京都西川を退社し1年後に当社へ入社。今年で4年になります。販売本部長を経て副社長を務め、2017年3月に社長に就任し今に至ります。

宮島:入社後の4年間を振り返ってみていかがですか。

多田:当社はもともと百貨店中心で商売をさせて頂いてきました。「ムアツ」を筆頭に自社ブランドの商品とともに「ダックス」「ミッソーニ」「ランバン」「アンテプリマ」などライセンス契約を交わした海外ブランドの商品を製造・販売しています。
しかしながら、時代の流れとともに百貨店の売場が縮小傾向にあることを受け、新規の販路開拓に取り組みました。専門店や卸問屋さん、GMS、テレビショッピングなどですね。これら新しい得意先様で販売、お取り組みをお願いした結果、3年連続で売上増の成果を挙げることができました。一昨年の数字でいえば前年対比108%で推移しています。2018年上期の決算はまだ確定ではありませんが、前年アップで進行しております。
(注:GMS…General merchandise storeの略で総合スーパーの意。イオンやイトーヨーカドーに代表される、食料品・日用品に加え衣料品や家具、家電など日常生活で必要なものを総合的に扱う小売業態を指す)

ダックスの布団

ダックス

1894年ロンドンで創業したテイラーが始まり。英国王室御用達ブランドとしてエリザベス女王など3つの紋章を授与されている。トラッドなハウスチェック柄が定番。

ミッソーニの布団

ミッソーニ

独創的で美しい色づかいと多様な柄を表現している。写真はカラフルなポピーが咲き乱れ、揺れ動く茎の隙間で蝶が舞い踊る様子をイメージした「ヴェロニカ」シリーズ。

ランバンの布団

ランバン

フレンチ&エレガンスを表現する華やかで高級感漂うコレクション。「シャトー」のカバーリングは光沢のあるビロードタッチで、ダマスクスのレリーフが印象的。

アンテプリマの布団

アンテプリマ

日本人デザイナー荻野いづみがイタリアから発信するコレクション。チョコレートコスモスをシックな色合いでまとめた「コスモ」はキッチュで遊び心あるデザイン。

宮島:時代の変革に合わせた取り組みで3年連続増収と、御社をけん引してこられたわけですが、寝具業界の変遷・動向についてはどのようにお感じですか。

多田:寝具を販売する場所が変わり、消費者が商品を購入する場所が拡がってきましたよね。たとえばインテリア小売業のニトリ、衣料品ストアのしまむら、ホームセンターのカインズなど、全国規模の店舗展開をされている他業種さんが寝具の販売に力を入れるようになっています。
寝具全体の売上でいえば、寝具業界は一兆円規模の巨大産業ですが、先月発行された寝具業界誌によると、全国の寝具専門店の数は5,000軒を切っているそうですよ。後継者問題、大型店舗の進出、インターネット販売の増加など理由はさまざま考えられます。
既存の販売ルートが縮小している一方で、新たな販売チャネルが増えてきている。こうした状況を踏まえ、我々メーカーとしては既存の得意先とのパイプを太くするとともに、消費者の動向に合わせた商品をいかに開発、提案できるかがポイントだと感じています。

発想の転換「考働」のもと「あるもの探し」

宮島:メーカーとしてヒット商品、新商品の開発は永遠のテーマになりますが、新機能や素材のイノベーションなど新たな試みについてお聞かせください。

昭和西川の多田昌且社長

多田:当社の社員に最近伝えていることのひとつに「ないものねだりではなく、あるもの探しをしよう」というものがあります。世に出した既存商品を見直し、商品説明や魅せ方、販売のアプローチを今一度考えてみる。「行動より考働せよ」を全社的な命題に掲げ、会社のため、得意先のため、消費者のために考えて働くという方針をとっています。
もちろん新商品の開発も行なっていますけれどね。素材についていえば我々メーカーとしては繊維商社さんが開発した新素材をいかに商品化するかがテーマになってまいります。秋冬物の総合展示会では、新素材を使った商品なども発表させて頂きますのでお楽しみにということで。

中国産ダウンの価格高騰事情

宮島:2019年10月に消費税率が10%に引き上げられます。増税とはいえ消費者からすれば商品価格の値上がりの印象が拭えないところですが、御社ではどのような対策あるいは意識で臨んでおられますか。

昭和西川の多田昌且社長

多田:日用品のように大量購入される消費財とは異なり、当社の羽毛布団などは適切に使用すれば購入から15年以上お使い頂けます。前回2014年の増税時にも多少の駆け込み購入の特需はありましたが、買い替えのサイクルが長いので、来年の増税による特需はさほど大きくないと考えています。とはいえ、高品質・高機能の高額商品については、増税は購入に踏み切るよいタイミングになりますので、時期になれば増税前キャンペーンなどを展開する予定です。

宮島:昨今、配送費の値上げと原材料費の高騰は家具・インテリア業界において多大な影響を及ぼしています。寝具業界ではいかがでしょうか。

多田:寝具業界でも、配送費の大幅な値上がりは会社の収益を圧迫する深刻な問題です。果たしてその値上がり分をどうカバーするのか。メーカーは配送サイズを抑えた商品を開発する、販売店は商品発注と販売方法を考える。それぞれのセクションで効率のよいモノの流れを見直し、考え、実行することで、配送コストの削減が可能と考えています。

宮島:こうした仕組みとルール作りは、先ほど仰られた考働の実践ですよね。では原材料費の高騰については。

多田:原材料費も全体的に値上げ傾向は止まらないですね。羽毛布団の中身であるダック・グースの羽毛の値上がりは中国産において顕著です。当社の羽毛布団はおもにドイツ・フランス・ハンガリーなどヨーロッパ産と中国産の羽毛を使用していますが、ヨーロッパ産の羽毛の価格は高止まり、これまで比較的安価だった中国産の羽毛が値上がりしているという状況です。

昭和西川社長対談風景

宮島:中国産の羽毛の価格が上がっている要因は何でしょうか。また、高騰に対してどのような企業努力を?

多田:ひとつは環境問題です。工場から排出される環境汚染物質に対する規制が厳しくなったことで、羽毛工場の数が減少しています。操業を続けている工場においても、従来より厳しい品質管理から生産コストがかかり、原材料費の値上がりにつながっています。
もうひとつの要因は内需の高まりです。これまで国外向けだった羽毛製品の国内消費量が年々増加しています。
この状況は当社に限らず業界全体の課題です。競合との差別化を図る商品の企画、販売方法の見直しという企業努力が不可欠だと感じております。

羽毛布団のお悩み「ニオイ」。その原因は……?

羽毛

宮島:私の友人がインターネットで手頃な価格の羽毛布団を購入したんですが、布団から動物臭がしてとても寝られないという体験をしたそうです。何が原因だったのでしょうか。

多田:まず考えられるのは、原毛(羽毛の原材料)の洗浄回数が十分ではなかったということ。原毛にはホコリや泥、水鳥の油脂が付着しています。洗浄が足らず汚れが残ったままになると、羽毛から嫌な臭いが発生します。とくにダックダウンはグースに比べて油分が多いので、洗浄が不十分だと臭いやすい傾向にあります。
洗浄に使用する水に問題があったという可能性もありますね。原毛の洗浄には湧き水や天然水、いわゆる軟水が適しています。分子構造が普通の水よりも細かいので、原毛の小羽枝の狭い隙間に入り込んだ汚れも落とすことができるのです。
あるいは、未熟羽毛を使用した布団だったのかもしれません。

宮島:未熟羽毛とは何ですか?

多田:良質な羽毛布団には、長期間かけて飼育された成熟した水鳥の羽毛が使用されています。成熟羽毛はダウンボールが発達しているのでふっくらとしていて、空気をたっぷり含み、吸湿と発散性に優れています。その反対が未熟羽毛、つまり子供の水鳥の羽毛ですね。飼育期間が短いためダウンボールが小さい、または変形しているなど、本来は原毛選別の過程で取り除かれるべき質のよくない羽毛です。当然のことながら成熟羽毛よりも安価で、製造コストを抑えるために使用されている場合もあり、残留成長ホルモンの関係で嫌な臭いを発する低品質な羽毛布団になってしまいます。

宮島:やはり値段が安いのには安いなりの理由があるということですか……。

多田:高機能・高性能の商品はコストや手間、厳重な品質管理などさまざまな要素が重なって相応のお値段になります。安さばかりを追い求めすぎると色々な弊害が生じるということですね。

健康寝具のパイオニアの使命とは

宮島:昭和西川といえばロングベストセラー商品の「ムアツ」です。

ムアツとは?
ムアツ

昭和西川を代表する敷き布団及びマットレスパッドのブランド名。宇宙ロケットの突端のタマゴ型の形状から着想を得て開発された。体に「面」で触れる従来の敷き布団と異なり、凸凹形状の「点」で支えるのが特長。連続したタマゴ型のフォルムが、受け止めた体重圧を水平・放射状にバランスよく分散させ、寝返りがうちやすく安定した寝姿勢を保つことができる。
1971年の発売以来、シリーズ累計400万台以上の販売実績(2015年現在)と、今までに全国100か所以上の医療機関への納入実績がある。モデルや医療関係者、アスリートなどの愛用者も多い。
2フォーム構造のムアツのワンランク上の商品として、ウレタン素材に改良を施した3フォーム構造の「ムアツ スリープ スパ」が2014年に発売された。

ムアツ

多田:ムアツは今年で発売47年を迎える当社の基幹商品です。2015年時点で400万人にご愛顧頂いており、それはひとえにお客様に快適な眠りをお届けするべく時代とともに進化を続けた結果であると自負しております。

宮島:快適な眠りとは具体的にどのようなものでしょうか。

多田:体と脳、そして心が休まる眠りです。睡眠中に体が感じたストレスは脳、心に影響します。逆に、体が心地よさを感じる眠りは、脳と心に安らぎをもたらす、というのが私の持論です。

宮島:最後に、御社の今後の展望をお聞かせください。

多田:健康寝具のパイオニアである当社の使命は、快眠寝具・サービスを通じて日本中に、そして世界に健康を届けることだと考えております。お客様に本当に喜んで頂ける、より良い寝具のご提案を全社員一丸となって「考働」してまいります。

昭和西川社長と握手

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