業界低迷脱却のカギは「ニッチなターゲット層に
いかにして商品を知ってもらうか」
2018年7月某日、フランスベッド本社にて行われた池田茂社長と弊社代表・宮島による特別対談の様子をレポート。家具インテリア業界をけん引する経営トップのリアルな声を余すことなくお届けします。
目次
- シニア向けサービス部門は好調、家具インテリア部門の低迷を救うのは?
- 増税・配送費の値上げ・原材料の高騰の影響は商品にどう影響する?
- 木材に代わる新素材が商品開発の救世主になる?
- 万人受けする商品より特定の人が「なるほど」と思う商品を
シニア向けサービス部門は好調、家具インテリア部門の低迷を救うのは?
宮島:2018年上半期を振り返っての所感は?
池田:介護ベッドなどシニア向け商品・サービスを展開するメディカル部門は順調に推移しています。日本の人口が年々減少する一方で高齢者の割合はますます増えていく。今後もメディカルに注力していく方針は変わりません。対して家具インテリア部門の数字は芳しくないですね。当社に限らず家具インテリア業界全体が生産体制の縮小傾向にあります。家具店さんも一部を除いて軒並み元気がないのが現状です。唯一明るい話題としては、全国的なホテル建設ラッシュの影響でホテルへのマットレス納入の需要が高まっていることがありますね。また、当社のショールームなどを会場にした販売会の売上は上々といったところでしょうか。
宮島:今後の寝具・家具業界の動向についてどうお感じですか?
池田:実店舗販売、いわゆる街の家具店さんに当社のベッドを展示して販売するスタイルは頭打ちの感が否めません。今の主流はインターネット通販になりつつあると感じます。ただしネット販売のネックは値崩れを起こしやすいこと。販売店の把握が難しいのもありますね。当社と取引のないネットショップがうちのベッドを売っていたという事例もあるくらいです。
宮島:こうした問題についてはどのような対策を?
池田:販売店をしぼり、どこに当社の商品を卸しているのか把握する。任意の販売店オリジナルの商品を製造して他店へ商品が流れるのを規制するなどですね。仕様にもよりますがベッドの製造ロットは10台程度から対応できますから。今回発表した新作(注:7月に開催された新作発表会のこと)も、ネット向け商品は基本的にオープン価格にすることで値崩れを防いでいます。
増税・配送費の値上げ・原材料の高騰の影響は商品にどう影響する?
宮島:2019年10月に消費税が10%に上がりますが何か施策は?
池田:2014年4月の増税時(注:消費税が5%から8%にアップ)は駆け込み需要がかなりありましたが、来年の増税には当時ほどのインパクトはないと考えています。通常月よりは売上が伸びるとは思いますが、特需のあとは必ず揺り戻しがきますから、1年で見れば結局は差し引きゼロです。今のところは増税のタイミングの1~2か月前に商品在庫を多めにするくらいですね。
宮島:配送費の値上げ・原材料の高騰による影響はいかがでしょうか?
池田:配送各社から値上げの要請がきています。当社でも10月以降値上げをせざるを得ない状況です。主要な宅配便業者が大型家具の個人宅配送を行なわなくなり、配送費は上がる一方です。ある取引先さんのところでは商品より配送費の方が高い事態が発生していると聞いています。そこで当社でも一般の宅配便で配送可能な商品を発表しました。シングルサイズのフレームとマットレスのセットで、ヤマトさんなどの宅配便で配送できるよう1梱包あたりの三辺の合計を160cm以下に収めました。当社製なのでもちろん国産、価格も5万円以下に抑えているのでとくにネット通販向けですね。問題は、果たして儲けを出せるのかというところですが(笑)。原材料についても同様ですね。とくに木材の価格高騰による値上げは避けられません。
宮島:7月の新作発表会ではほかにどのような商品を?
池田:目玉のひとつは圧縮ロールマットレスですね。従来のロールマットレスは開梱してしまうと元の状態には戻せませんが、今回発表した新作は開梱後も空気を抜いてコンパクトにできます。おもにネット通販向けですね。圧縮できる三つ折りマットレスもゆくゆく発表予定です。そのほかにもいびき軽減枕の新作や逆流性食道炎防止ベッドなどを発表しました。
木材に代わる新素材が商品開発の救世主になる?
宮島:商品開発における技術革新についてお聞かせください
池田:木材の価格高騰を受けて、木に代わる代替材の開発に取り組んでいます。開発途中なので詳細はまだ発表できませんが、中国やエストニア、オーストラリアなどに出向いて代替材を探しており、1~2年のうちに実用化したいと考えています。新素材を使った介護ベッドのフレームなどを製品化したいですね。
万人受けする商品より特定の人が「なるほど」と思う商品を
宮島:消費者に伝えたいことは?
池田:万人に受ける商品よりニッチな商品、特定の人が「なるほど」と思う商品を届けたいですね。ただ、そういった商品はテレビCMなど広告を打っても実りが少なく、家具店さんに置いてもなかなか動きません。購買ターゲットに商品の情報が明確に届く、知ってもらうための努力が不可欠だと考えています。実店舗よりネット販売が主流の今であれば、各通販サイトの特性に合わせた最適の商品を提供するということですね。
宮島:フランスベッドの主要ターゲット層は?
池田:当社の家具インテリア商品は、買替までのスパンが長いベッドがメインです。品質や耐久性に自信を持っているのでお値段も相応にします。そういったベッドを買う最大のきっかけは結婚だと我々は考えています。夫婦が寝るベッド、子供が生まれてベビーベッドを卒業したときに親子一緒に寝られるベッド、さらに子供が成長したときにも使えるベッド……と家族のかたちの変化に合わせた商品・サービスを企画提案していきたいですね。
宮島:フランスベッドの今後の展望をお聞かせください
池田:新作発表会にも出しましたが、家具インテリア商品の新機軸として10月以降に仏壇フェアを予定しています。家具メーカーが新たに力を入れ始めているのが、従来の和の仏壇とは趣を異にするマンション向きのコンパクトな家具調仏壇です。当社でも20数基種を全国のPRスタジオ・ショールームなどで展示販売、ネット通販での展開なども検討しておりますのでご期待ください。
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