track-13-akase-group track 13 マスターウォール(AKASE GROUP)

家具を超えて、暮らしの“今”をつくる

アカセグループ株式会社藤井幸治と株式会社ヘヤゴト宮島一郎の対談

※本記事に掲載している内容は2025年4月当時のものです。最新の情報と異なる場合があります。


2025年4月某日、家具ブランド「マスターウォール」を擁するAKASE GROUP株式会社の藤井社長と、ヘヤゴト代表・宮島の社長対談が行なわれました。
AKASEの創業からの歩み、マスターウォール誕生の背景、社名変更の狙い、地域との関わり、そして家具製造にとどまらない事業展開の未来像まで、幅広いテーマでお話を伺いました。

AKASE GROUP株式会社 PROFILE
アカセグループ株式会社の家具職人

1961年、岡山県笠岡市に赤瀬木工所として創業。素材選びから仕上げまでを自社で一貫して行なう体制を整え、高品質で長く使い続けられる家具づくりに取り組む。
2006年に自社ブランドマスターウォールを立ち上げる。“100年後のアンティーク家具へ”をコンセプトに、ワイルドウッドダイニングテーブルやデニッシュソファなど、ウォールナット無垢の魅力を最大限に引き出したプロダクトを生み出している。
さらに食の提供やアミューズメント、地域密着型支援など、家具製造以外にも事業を拡大。2024年12月に現在のAKASE GROUPに社名を変更した。

(目次)

婚礼家具からの脱却と「ワイルドウッドテーブル」の誕生

アカセグループ株式会社の藤井社長

宮島:創業当初は桐ダンスを製造されていたそうですね。

藤井:はい、最初は収納家具や洋服ダンスを中心に製造していました。広島・福山にある家具店の下請けから始まり、そこから徐々に自社ブランドの婚礼ダンスや桐ダンスも手がけるようになっていったんです。

宮島:現在のマスターウォールのラインナップはテーブルやチェア、ソファといった脚物家具が中心なので、少し意外な印象を受けます。製造方針を大きく転換するきっかけは何だったのでしょうか?

藤井:やはり、時代の変化ですね。私が入社した当初は婚礼家具の需要もあり、事業は順調でした。ただ、数年経つと急速に人気が低下していきました。岡山で作られるタンスは、たとえば広島・府中産のようなブランド力や個性に乏しく、次第に市場から求められなくなっていったんです。このままでは立ち行かなくなる——そう感じて、婚礼家具からの脱却を模索しはじめました。

藤井:そんな中で、大きな転機となったのが「ワイルドウッドテーブル」の開発です。ウォールナットの無垢材を使用し、その風合いや木目を大胆に活かしたデザインで、2人の社員が手がけました。1999年に福山での展示会に初めて出展したところ非常に好評で、徐々に注文が増えていきました。この製品がヒットしたことで、当社は脚物家具へ本格的にシフトしていくことになったんです。

ワイルドウッド ダイニングテーブル

マスターウォールのワイルドウッド ダイニングテーブル マスターウォールの記念すべき1stプロダクト。
無垢ウォールナットの天板に異素材のスチール脚を組み合わせたシンプルかつ普遍的なデザイン。どんな椅子とも相性が良く、1999年の発売以来不動の人気を誇る。

主要ブランド「マスターウォール」の誕生

積み上げられたウォールナットの木材の画像

宮島:その後、マスターウォールというブランドを立ち上げられました。

藤井:はい、私が社長に就任した2006年にスタートしました。名前の由来は「ウォールナットの達人=Master of Walnut」です。当初は製品の90パーセント以上をウォールナット材で展開していました。
今では、オークなど他の樹種へのニーズも増え、ウォールナットの割合は70パーセント程度に落ち着いています。それでも、「マスターウォール=ウォールナット家具」というイメージは定着しており、ブランディングの力を強く実感しています。

アカセ木工からAKASE GROUPへ

藤井社長と宮島社長の対談風景の画像

宮島:社名の「AKASE」は、創業者のお名前に由来していますか? 現在の藤井社長のお名前とは異なりますが…。

藤井:そうなんです。私は母方の姓である「藤井」を名乗っています。母が赤瀬家に嫁いだ際、藤井家の姓が絶えないようにと、次男だった私が藤井姓を継ぐことになりました。
高校卒業後は東京の専門学校でファッションビジネスを学び、アパレル業界で経験を積みました。その後、25歳で岡山に戻り、AKASEに入社。当時は長男がすでに会社に入っていたので、自分が将来社長になるとは思ってもいませんでしたが。

宮島:2024年12月に「アカセ木工」から「AKASE GROUP」へと社名を変更されました。その背景について教えてください。

藤井:家具製造だけでなく、フィットネスや飲食(カフェ運営)など、他分野への事業展開を進めていたため、企業グループとしての体制にふさわしい社名が必要でした。そこで、ホールディングス的な考え方をベースに、「AKASE GROUP」として再出発することにしたんです。
今後は「衣・食・住・遊・知・健・音」というライフスタイル全体をデザインしていくことを事業ビジョンとして掲げています。

地域とのつながりを大切に

宮島:地域貢献活動についても積極的に取り組まれていると伺いました。

藤井:はい、試作品や展示戻り品など、販売機会のない家具を活用して、地元の小中学校に寄贈する活動を行なっています。教育委員会とも連携し、教育環境の改善に貢献できることは大きなやりがいです。
また、地域の子どもたち向けにサッカー大会を開催するなど、地域密着のCSR活動にも積極的に取り組んでいます。企業として、地域に支えられているという感謝の気持ちは、これからも形にしていきたいですね。

AKASE公式キャラクター ナッツくん
AKASE公式キャラクター ナッツくん AKASE公式キャラクター ナッツくん

AKASE創業60周年記念事業のイメージキャラクターとして2021年に誕生。
おっとりした性格で、普段はぼんやりしていることが多いけれど、困った仲間がいると放っておけない、優しいリスの男の子。瀬戸内の海に浮かぶ不思議な島で、仲間の動物たちと暮らしている。
公式SNSでは、ナッツくんの日常のひとコマや、地域振興イベントに参加する様子など、ご当地キャラクターとして活躍する姿が垣間見える。

経営の軸にあるもの

藤井社長と宮島社長の対談風景の画像

宮島:経営において、特に大切にしている価値観は何でしょうか?

藤井: 一番は「スピード感」です。行動が早ければ、結果も早く出る。たとえ失敗したとしても、早期に現状を把握することで次の一手が打てます。
もちろん、社員の中にはじっくり熟考するタイプもいます。そのようなメンバーには、「遅いよ」と正直に伝えることもありますが、各人の特性を活かしてチーム全体のバランスを取るようにしています。

宮島:ブランド戦略においては、どのように時代の変化に対応しているのですか?

藤井:マスターウォールでは、長らくウォールナットを主力にしてきましたが、近年ではオーク材の人気も高まっています。選択肢を広げつつも、家具の質とブランドイメージはしっかり守る。これが当社の基本姿勢です。
さらに「クラフトスケープ」というブランドでは、端材と伝統工芸を組み合わせた小物づくりにも取り組み、環境配慮とコスト抑制の両立にも挑戦しています。

「家具」から「暮らし」全体へ

マスターウォール銀座ショールームの画像

宮島:今後の事業展開やブランドの方向性について、お考えをお聞かせください。

藤井: 家具はあくまで“核”であって、そこにとどまるつもりはありません。今後はホテルやヴィラといった“遊”の領域にも事業を広げていきたいと考えています。家具が設置される空間、そこでの体験、サービスを含めて、ブランドとしての価値を提供していきたい。
また、「アカセ大学」という社内外向けの知識共有プラットフォームを設け、販売や接遇などの研修の場も整備しています。さらに、健康や音楽といった切り口からの生活提案にもチャレンジしていきたいですね。

若者たちへのメッセージ

宮島:最後に、これから経営を志す若い世代に向けて、メッセージをお願いします。

藤井:実を言うと、私自身、帰郷するまで社長になるなんて思っていませんでした。夢や目標もはっきりしていなかった。でも、どんなに困難でも「諦めないこと」が一番大切だと思います。
経営の危機に何度も直面しましたが、「やり抜く力」「気づく力」、そして「即行動する力」があったからこそ、乗り越えられたと思っています。
若い皆さんには、できるだけ早く自分の“使命”に気づき、それを信じて貫いてほしい。そして、失敗や困難にぶつかっても粘り強くチャレンジを続けていけば、きっと未来は開けていくはずです。

藤井社長と宮島社長の握手

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