episode-05-asahi 家具インテリアのプロに聞く~メーカー編~
episode.05 アサヒ

大分の自社工場で国内一貫生産
老舗ソファメーカーが誇る張り込みの技術

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2019年7月某日、アサヒ東京営業所展示場で吉光プロにインタビュー。卓越した張り込みの技術、リビングダイニング家具の座り心地へのこだわり、杉のテーブルの魅力など、家具の営業歴34年のプロの目線で語っていただきました。

アサヒ PROFILE

大分県日田市に本社・自社工場を構える家具メーカー。1946年に創業者・小埜幸重が自宅横に構えた朝日ロクロ工業所が原点。おもちゃのコマや丸盆の小物からはじまり、応接用ソファ・テーブルなど家具製造へ事業を拡大。1961年に株式会社朝日木工を設立。1976年に起ち上げた株式会社アサヒに朝日木工の販売部門を分離、販路を全国区に広げる。大川市と川崎市、名古屋市のショールームで商品を展示している。

目次

大手競合にも負けないアサヒの張り込みの技術

ー 吉光プロが家具業界のお仕事を選ばれたきっかけを教えてください。

アサヒのインタビュー風景

アサヒの本社がある大分県日田市の日田林工高等学校を卒業後、銘木を輸入する神戸の会社に3年ほど勤めました。その後、家の事情で日田に帰ることになったんですが、神戸時代に木の、とりわけ杉について勉強していたので、それを活かせる仕事に就きたいと思い、アサヒに入りました。それから、上京したいという理由も大きかったですね。その頃にはすでに東京営業所がありましたので、そこへ行きたいと。

ー なるほど、家具業界ではずっとアサヒさんでお仕事をしてこられたわけですね。どのような業務を担当されてきたのでしょうか。

1985年から34年間、アサヒひと筋です。入社以来ずっと営業畑で、関東一円は全エリアを経験しています。

ー 家具メーカー・アサヒについてお話しいただけますか。

昭和21年(1946年)に先代社長が個人で興して、創業73年になります。創業前は馬車の荷車の木のタイヤを作っていました。
家具メーカーとしてのはじまりは、木材加工のろくろを使って生産した木の丸スツールです。昭和32年(1957年)に応接セットを作りはじめました。木を使って、その上にクッションを置いて、というのが最初ですね。それから「ひとつのことに絞ろう」と革に重点を置くようになり、革製の家具製造に注力するようになりました。今ではカリモク家具さんに次いで革を使う家具メーカーと自負しております。

ー アサヒさんといえばソファのイメージが強いように感じますが、スタートは木の家具だったんですね。

実はそうなんです。木からはじまり、社長が革に注目して、木を使いながら革の張りぐるみ商品を作っていました。革は現在50色以上そろえています。最近は布張りの需要も増えていますので、布も少しずつはじめている状況です。

ー 先ほどカリモク家具さんの名前が出ましたが、ほかの家具メーカーと比べてここは絶対に負けない、強いというものはありますか。

木を使った張り込み(※)ですね。3Dでも曲線のきれいなラインを出せる張り込みの技術が、アサヒの家具の特長です。

(※)張り込み とは
張り込み仕様のソファ

ソファの本体に張地(=座面や背もたれ、ひじ掛の表面に張る革や布の生地)を施したソファの仕様。ソファのフレームに合わせて張地を張るため、ソファのフォルム・ラインが美しく出る。使用中に張地がヨレたりシワになることもない。張地は張替えができるので、ソファを長く使用することが可能。

ー 僕もアサヒさんのソファを販売させてもらいますけど、普通じゃできないラインというか。あのフォルムを作るのはなかなか大変じゃないですか。ステッチとか。

アサヒのソファPalm
シャープなデザインのソファPalm(パーム)

ステッチと、角(かど)もそうですね。あの部分は角が落ちないように中を詰めるのが難しいんです。縫製、マットやウレタンの詰め方も、よそのメーカーさんではできない技術ですね。また、できあがった製品の輸送時に、角が折れたりしないように梱包にも注意を払っています。大変ですけど、どこか特出するものがないと、今の家具業界を生き抜けないと感じているので、そこを怠ることはできないなと。

ソファメーカーが展開する「リビングダイニング」家具

ー 工場は九州でしたよね。製品はそちらで一貫生産ですか。

はい。大分県で作っています。バブルの頃にはだいたいどこのメーカーさんも一度は輸入をやられていたように思いますが、当社はそれをせず、自社製品だけでやってきました。
木の加工から全部、自社の工場です。おそらく西日本でいちばん大きい乾燥機を使用しているので、木の乾燥はよそと比較しても引けを取らないんじゃないかと思います。日田の杉の質もいいですからね。

ー 御社の杉の丸テーブルは品質がよくて、価格もお手頃です。

杉は加工がしやすく、軽くて使いやすいんですよ。杉は地場の木材なので、それを有効に使っている点も大きいですね。

ー 逆に今後の課題、ここを強くしたほうがいいと感じている点はありますか。

アサヒのリビングダイニングThuis
杉材のリビングダイニングThuis(トイス)

ダイニングテーブルとイスのセットのラインナップが薄くてトータル展開できないところですかね。テーブルは作れるんですけど、今ある工場の機械は細くてイスの製造は難しい。その点をカバーするべく進めているのがLD、リビングダイニングのシリーズです。

ー 丸テーブルと合わせるアーチ形のソファとベンチは販売会でもよく売れていますね。アサヒさんといえば丸テーブルの先駆者だと僕は思っているんですが。

おかげさまで、あれはうちのヒット商品のひとつになりました。今では他社さんでも丸テーブルを作っていますが、組み合わせるのは普通のイスなんですよね。当社で丸テーブルのヘリに合わせた丸いソファを作ったのは、そういう背景もありました。

得意の張り込み技術を生かした小ロット商品で勝負

ー アサヒさんの最近の人気商品を教えてください。

VARIE(バリエ)、BEAK(ビーク)、PANSER(パンサー)。この型がうちの最近のメイン商品ですね。

アサヒの3大人気ソファ
アサヒのソファVARIE

●VARIE(バリエ)
コンパクトなサイズと、肘部から背にかけてのスマートな形状、背面のなめらかなラインが特徴的。バケットタイプのシートとハイバックの背もたれが、体に負担の少ない姿勢を保てるように腰を支え、首までサポート。1人・2人・2.5人・3人掛の4サイズ展開。

アサヒのソファBEAK

●BEAK(ビーク)
シャープな曲線を描くエッジと、スマートなフォルムがリビングにモダンな印象を与える。ハイバックの背もたれに背バネを使用し、シートをバケット状にすることで、安定性と包み込むような座り心地を実現。1人(回転)・2人・2.5人・3人掛の4サイズ展開。

アサヒのソファPANSER

●PANSER(パンサー)
イタリアンモダンのベーシックなデザインに、太糸を使用したステッチラインがアクセント。ハイバックの背もたれとバケットシートが体全体をゆったりと包み込む。座にはヘタリが少なく、耐久性と反撥性を向上させたソフトワイヤーキャンバーを使用。1人掛・2人掛・M・Lの4サイズ展開。

ー ほかのメーカーさんでは見ないような、特徴的な形をしていますね。

真似されにくいデザインにもこだわっています。たとえばビークと同じようなソファを中国で製造した場合、出荷するときの梱包がビニルなので保護が弱く、デザインの肝になる角の部分を潰さずにコンテナに積むのは難しい。そういったところからも簡単に真似できないようにしています。

ー 国産の御社のソファの仕上がりのよさもさることながら、その割にリーズナブルな価格を鑑みると、確かに真似できないでしょうね。

ありがとうございます。ただ、当社のソファは張り込み仕様なので、張地が布の場合はカバーリング(※)仕様でないことがネックでした。そこで今年の新作では汚れがつきにくく傷に強いファブリックを採用したソファを発表しました。

(※)カバーリング とは
カバーリング仕様のソファ

ソファ本体からすべての生地が取り外せるソファの仕様。カバーリングの生地は布(ファブリック)がほとんどで、取り外したカバーは自宅あるいはドライクリーニングで洗濯でき、清潔さを保ちやすい。色や生地の素材を選べるうえに自宅でカバーの掛替えができるので、インテリアに合わせたコーディネートが気軽に楽しめる。

ー 最近の家具業界の動向はどのように感じていますか。

商店街や駅のそばなどで代々続いているようなお店は、めっきり見かけなくなってきました。郊外店でも店舗数が3~4店の家具屋さんは結構厳しそうですよね。そうなってくると大型チェーン店か、あるいは傑出した自店こだわりの商品を置いているお店。ある種特殊な、特長のあるところじゃないと存続していくのは難しいのかなという気がしています。
そしてそれはメーカーである当社も同様です。ベーシックで安価なタイプの商品よりも、ちょっと変わった感じの商品で勝負する必要があると思っています。

ー 長年営業に携わってこられた吉光プロから見て、お客様のニーズや特徴に変化はありますか。

アサヒのインタビュー風景

昔は同じ商品がたくさん売れたんですよね。ヒット商品という形で。もちろん今でもヒット商品はあるんですけど、ロングセラーと呼ぶには期間が短かったり、色を変えなきゃいけないとか。形についても同様で、同じ長椅子でも10cm刻みでバリエーションを持たせたり、シェーズロングタイプを作ったり。
画一的ではなく、変化を持たせないと売れない時代になってきています。同じ高額ソファでも20~30年前はそればかり売れていたので、10セット20セット作れば利益を出せました。ところが今はお客様のニーズが1つ1つ違うので、工場もコストがかかる。いいものを、数を作らなくても商売できるやり方で、かつオーダーメイド感がある商品でがんばるしかない、というところです。

ー お客様が、こだわりを持って家具を選ぶようになったと。

今はネットで色んなものが見られますし、調べられます。そこで得た情報もいっぱい頭の中に入っていますからね。商品の価格などはお客様の方がよくご存知だったりしますよ。だからこそ当社は「ベーシックな商品よりも、よそに並んでいないような商品で勝負する」という方針で、変わったデザインや形でやっているわけです。

ー 確かに、アサヒさんのソファを真似しようと思ってもできませんものね。

昔は中国製品で似たようなものを結構見かけたんですが、最近は見なくなりましたね。当社の強みが発揮されてきている感じはしています

2019年の新作はファブリック商品に注力

ー 新たなニーズに対する今後の取り組み、新作商品についてお聞かせください。

7月の展示会で新作をいくつか発表しました。
こちらはリビングダイニングのMetro(メトロ)です。得意の丸テーブルで、木部はタモ材。ナチュラル、ブラウン、ウォルナットの3色あり、天板と脚それぞれお好きな色をお選びいただけます。

●Metro(メトロ)
アサヒのリビングダイニングMetro

木目の美しいタモ材を使用したダイニングセット。丸テーブルの面形状(=天板の木端・木口の形状)を丸く仕上げたやさしいデザイン。ベンチは丸テーブルのラインに沿ったアーチ形。チェアは無段階のリクライニング式で、アームの高さが異なるハイとローの2種。ソファメーカー製ならではの座り心地のよさも魅力。張地は革・布・ソフトレザーの全張地から、木部は3色から選択可能。

※木端…こば。板材の側面のこと。
※木口…こぐち。樹木の年輪の切断面のこと。

こちらのPonte(ポンテ)は、ペットがいるお宅でも安心な生地を採用したソファです。

●Ponte(ポンテ)
アサヒのソファPonte

なだらかなアールを描く肘置き、シャープな木部でスッキリとしたデザインに仕上げたソファ。クッション材には高復元力・高通気性を備えた、羽毛に近いふんわりとした座り心地を体感できる素材「モギュフィルプラス」を採用。張地には、引っかきに強い・防汚・帯電防止・撥水・抗菌・防臭など、高機能と快適性を両立したファブリックを採用している。1人・2人・3人掛の3サイズ展開。お掃除ロボット対応。

ー ペットを飼われているお客様も多いですからね。ワンちゃんや猫ちゃんがソファに乗ってキズがついてしまうというお悩みもよく耳にします。まったくの無害・無傷というのは難しいでしょうけど、ペットに強い生地を使った家具というのは、今後ますます需要がありそうです。

はい。今年の9月に発売予定ですのでぜひご注目いただきたいですね。

ー 新作を拝見していると、本革メインからファブリックに力を入れているのがよくうかがえますね。今後はこういった、スッキリとしたデザインが主流になっていきますか。

そうですね。ハウスメーカーのCMを見ても、シンプルな家具・インテリアが多いですよね。そういった媒体を目にすると、お客様の中のお部屋イメージもそちらに向かいやすいと思います。

ー 主流といえば、最近はお掃除ロボット対応の家具も増えていますね。昔のソファは床との間に隙間がないものが多かったですが、このポンテのように足元をお掃除ロボットが通れることをソファ選びの条件のマストに挙げているお客様も多いですよ。

実はもともと、下があいているタイプのソファは、ご自宅に床暖房を入れている寒冷地でよく売れていたんです。ソファが床まであるとどうしても熱がこもってしまうので。最近は寒冷地に限らず床暖房を入れるご家庭が一般的になっているので、足元があいているタイプのソファがエリアにかかわらず売りやすくなりました。

ー こちらのダイニングテーブルとイス・ベンチも杉材ですか。

はい。テーブルはAST-L、ベンチ・イスは風林(ふうりん)という名前の新作です。天板と座面・背面に杉の無垢材を使用しており、一枚一枚の表情が違います。

●AST-L ダイニングテーブル
●風林(ふうりん)イス、ベンチ
アサヒのAST-Lと風林

杉の柔らかな手触りと温もりが感じられるダイニングセット。杉材の柔らかい部分を削って硬い部分を残す「浮造(うづく)り」を施し、テーブル天板の表面強度を高めているため傷に強い。さらに塗料にポリフレックスエコHHシーラーとチタンFXを使用することで、従来の杉の家具より耐久性を持たせており、安心して長く使える。ベンチは幅150・180・220cm、テーブルは幅200・300・400cmの3サイズ展開。

※チタンFXは風林のみ使用

ー 杉材を使った家具の特長を教えてください。

先ほども申し上げましたが、軽くて加工がしやすい。それから、節や木目がきれいです。ひと昔前まで家具の材料ではなく建材と見られていて、だから安いというイメージが強かったんですが、最近はそうしたイメージを持つ方は減っています。今では杉の家具は人気ですよ。
反面、製品になる段階できちんと乾燥させないと反ってしまうので注意が必要です。含水率を一度8%まで落としてから最終的に10%前後に安定させると、日本の気候になじみ、反りや割れの少ない木材になるんです。

買替えの時にも選ばれる家具を作り続けたい

ー 最近あった、仕事で嬉しかったエピソードをお願いします。

アサヒのリビング丸テーブルAST
杉材のリビング丸テーブルAST。直径100~200cmの5サイズ展開

家具屋さんを回っていて、お店に置かれた引き取り品がうちの商品だったのを見かけたときですかね。お客様から「アサヒの家具よかったから、また買うよ!」なんて仰っていただけることがあります。現場を回るとそういったお声が生で聞けるのが嬉しいですし楽しみですね。

ー では最後に、アサヒの家具のファンであるお客様がたにひと言。

アサヒの家具を10年、15年使って買替えの時期がきたとき「またアサヒで揃えようね」と思っていただけるような家具を作り続けていきます。当社の商品を長く大事に扱っていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

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