episode-04-naganointerior 家具インテリア・寝具のプロに聞く~メーカー編~
episode.04 ナガノインテリア

メイドイン福岡の家具は大川のみにあらず!
価格以上の品質を保つ自社一貫生産体制

ナガノインテリアの川原取締役

2019年5月某日、ナガノインテリア横浜ショールームで同社取締役の川原プロにインタビュー。遠方から販売会に訪れるほど熱心なファンも多いナガノインテリアの家具。その人気の秘密は、お客様のニーズに寄り添う納得の理由でした!

ナガノインテリアPROFILE

福岡県朝倉市に本社を置く1946年創業の家具メーカー。創業当時の製造品目はタンスや学校用備品。現在はソファやテレビボード、ダイニングセット、シェルフなど。国内の自社工場で熟練の職人が一貫受注生産で作り上げる家具は人気が高く、ショールームで行なわれる販売会には遠方から訪れる人も多い。
ちなみに社名のナガノの由来は創業者の姓で、漢字にすると「永野」。地名の「長野」ではない。

目次

甘木の環境が育てた自社工場の一貫生産体制

ー まずは川原プロご自身のご経歴から。家具業界に身を置かれて何年目になりますか?

インタビューの様子

家具業界歴は22年です。1997年に大学を卒業してナガノインテリアに入社し、現在に至ります。最初の配属先の大阪で3年ほど営業を経験後、滋賀県の彦根にサービスセンターを立ち上げることになり、単身出向して滋賀と福井を見るという形で5年。そこから声が掛かって副所長の立場で横浜に異動。所長、部長と経て今年で14年目になります。

ー ずっとナガノひと筋! 転職が割と多い家具業界ですごいですね。入社前から家具がお好きだったんですか?

家具に特別な興味があったわけではないんですが(笑)。仕事を職種として考えた時に、営業職かなという頭で就職活動していました。メーカーと商社で比較したときには、自社の商品を売ることに、より大きなやりがいを見出せるのではないかと。また、私は福岡県出身なので、福岡が本社の会社というのも視野に入れていました。こうした条件で絞っていって、当社に採用されたというところです。

ー ナガノインテリアの歴史や強みについてお聞かせください。

ナガノインテリアは今年で創業73年の、老舗家具メーカーと自負しています。福岡に本社を持つほかの家具メーカーさんとの違いのひとつに、創業の土地が大川市(※)ではなく甘木市(現・朝倉市)だったことがあります。大川の周辺には、協力工場が多いんです。それが家具製造を分業制にし、最終的にメーカーが組み立てて商品が完成するという流れを可能にしています。

※大川市について
筑後川昇開橋の景観

福岡県大川市は、佐賀県との県境で筑後川の左岸に位置する、日本の五大家具産地のひとつ。室町時代の船大工が製造していた箱物に端を発し、江戸時代後期に現在の大川家具の基礎が築かれたといわれているほど、家具との縁が深い。現在も大川市には家具メーカーや製造工場が多く集まっている。
日本の五大家具産地について詳しくはコチラの記事をチェック。

一方、当社が創業した甘木にはそういった環境がなかったので、あらゆる製造工程を自社内で完結させる必要に迫られました。そのため、当時から家具を加工するドイツ製の先進的な機械を買い揃えたり、木材の乾燥から商品の生産・出荷まで一貫してできるような仕組みを整えざるを得なかったんですね。とくに在庫生産から受注生産に切り替えたここ10年ほどは、自社工場内で一貫生産できる仕組みがフルに活かされて、多様な商品開発と、自社生産ならではの細かい、お客様に寄り添ったオーダー対応を可能にしています。そこが当社の強みですね。

ー なるほど。では逆に、解決すべき課題と感じていることはありますか?

先ほど申し上げたような、多様で柔軟なオーダー対応がとれる当社の強みも、一定以上の受注が入った場合、迅速な対応が難しくなるという側面があります。昨年もありがたいことに多数のご注文をいただいた反面、生産が追い付かず、販売店様やお客様にご迷惑をおかけしてしまいました。協力工場を持たず、自社で一貫生産しているが故に、需要と供給のバランスが崩れると納期が延びてしまう点は、大きな課題だと常に感じています。ちなみに現在は、一部商品をのぞき、受注から約3~4週間で出荷できる状況まで改善しておりますのでご安心ください。

ー それでも、最近の消費者は「本当に欲しいものは納期が延びても待てる」という傾向にあるように思いますがいかがですか。

「家具が今すぐ欲しい」というお客様には、販売店の方もナガノインテリアの商品はおすすめしにくい部分があると思いますが、確かに昔と比べると「こだわったいい家具」「自分が気に入ったもの」を探して、多少の納期は待てると感じておられるお客様が増えているように感じますね。

遠方からも来場するナガノインテリアの販売会が人気の理由

ー ナガノインテリアの家具にはどのような特長がありますか?

ナガノインテリアのダイニングセット

当社は創業直後から脚物の商品開発に力を入れています。その中でもダイニングセット、リビングセットが主力商品です。それぞれに強みやこだわりがありますが、第一は原材料である木材ですね。当社の家具には突板やシート張りの技法は使っておりません。すべて木材を削る、曲げる工程を経て作り上げています。材種についても他社様より豊富なバリエーションで展開しており、木のぬくもりが感じられるデザインの商品を数多く取り揃えております。

ー ナガノインテリアといえば、サイズとデザインのオーダーに対する柔軟性も人気の理由のひとつです。

ありがとうございます。テーブルでいえば5センチ刻みのサイズオーダー、天板・脚のデザインにも多様性を持たせています。
ほかのメーカーさんがやられていないニッチな取り組みでいえば、ダイニングチェアの脚を伸ばす方のサイズオーダーですね。脚をカットして短くする対応は多くのメーカーさんでやられていますが、ナガノインテリアでは3年ほど前から、主力のチェアに関しては、高さアップも含めて1センチ刻みでお作りする対応をしています。
国産のダイニングテーブルの高さは70センチ前後ですが、海外製のテーブルはだいたい75センチ前後あります。海外製のテーブルをお使いのお客様が、それに合わせてチェアを買い替えたいというご要望があったときに、国産のチェアでは選択肢に入らない・対応できない。(75センチのテーブルに合わせて)チェアの高さを上げることが、ナガノインテリアでは追加料金なしでできるというサービスは、お客様にとても喜ばれています。

ー 私も(ナガノインテリアの)販売会に参加してそれを実感しました。お客様のニーズに非常にマッチしているというか、そのために遠くから来てくださっている方もいて、ものすごい強みだと思いますね。それから、張地の種類が多いことも魅力です。

ナガノインテリアの張地サンプル

そうですね。これについては得意先様からのお声で実感するケースも多いんです。当社でプロパー採用している張地はファブリックで100種類以上、革・合皮も数十種類あります。こだわりの強いお客様の「手持ちの生地を使いたい」「どこどこの生地メーカーさんのこの生地を張りたい」というご要望に対して、ほかの家具メーカーさんではお受けできない場合が多いらしいのですが、私どもはできる限りお客様のご希望の生地でお作りする対応をとっております。

ー 私は個人的に、ナガノさんの家具=杉のテーブルという印象が強いです。価格も割とリーズナブルだと感じています。どのような経緯で開発を?

杉のテーブルは「Mother Forest」というシリーズですね。実は当社でも予期していなかったというか、予想以上の反響があった商品です。当社が管理している山林が熊本にあり、そこで間伐したスギ材を使って家具を作る企画が持ち上がったんですね。とくに得意先様のご要望をキャッチして取り組んだわけではなく、「ちょっと作ってみました」的なかたちで発表したところ、スギ材が持つ独特の柔らかい木のぬくもりが広葉樹以上に感じられる、スギの良さが伝わる商品に仕上がっていた、という。
価格設定についても、ボリュームのある無垢材の家具でありながら、20~30代のニューファミリー層に手の届く価格帯でご提供できた点で非常にご好評いただいています。当初はダイニングセットだけでしたが、現在はソファなどアイテムのバリエーションを追加している状況です。

隠れ家みたいな横浜ショールームの前身は会社の●●

横浜ショールームのフロア案内図

ー 本社がある福岡をはじめ、全国の主要都市にショールームを展開されていますが、関東のショールームを東京ではなくて横浜に構えたことには何か理由があるのでしょうか。

狙いをもって横浜に、ということではありません。横浜に関東の拠点を構えたのは50年以上前の話なので、その経緯は私も存じ上げませんが、当時は何もない野原にポツンという状況だったらしいです。現在のショールームは築45年ほどで、長年当社の社宅として使われていました。経年とともに老朽化し、取り壊しの案も出たんですが、関東圏にショールーム設備がなかった状況を鑑み、自社物件であるこの建物を活用する方向で、6年前にショールームとしてリニューアルしました。2階から4階の9部屋に、ナガノインテリアの家具を展示しています。

ー お客様からすると部屋ごとに異なるコンセプトやテイストで家具が配置され、ワンフロアの広々としたショールームとはひと味違う、モデルルーム的な雰囲気ですごくいいと思います。

私どもの強みのひとつである多様な材種対応を、ひと部屋ひと部屋区切った空間でご提案できるというのは、ナガノインテリアの商品とバリエーション、建物の構成が非常にマッチしていると感じますね。お客様にも「次の部屋を開けるのが楽しみ」と喜んでいただいています。

ー 販売スタッフも「お客様を各部屋にご案内しながら私たちも楽しんでいます」と言っていました。一方で、各部屋のコンセプト決めやレイアウト変更は大変なのでは?

はい。ショールームを訪れたことのある方はご存知の通り、この建物にはエレベーターがないので、商品の入れ替えは結構な重労働です。新作が出るタイミングと、商品の鮮度を保つため、少しずつ商品を入れ替えてお客様に飽きを感じさせないようにしています。

良い商品を作るとともに、メーカーも発信する努力を

ー 川原プロの目から見て最近の家具業界の動向はいかがですか?

業界誌や方々から見聞きしても家具業界の先行きは厳しいと、暗い話題が大半を占めています。実際、当社も2018年は大きな苦戦を強いられた年でした。とはいえ、これは市況とは別の観点でのことです。先ほどお話ししたように、納期の面で色々ご迷惑をおかけしてしまい、催事や販売活動を自粛せざるをえないような状況でした。一方で、中長期のビジョンを社内に浸透させるとともに、社員のためのさまざまな制度改革に取り組む機会をいただけた期間でもありました。
ナガノインテリアとして見通しを申し上げますと、実はそれほど悲観していません。少々楽観的すぎるかもしれませんが、まだまだやれること、できていないことはありますし。メーカーとして販売店様への卸事業を核とする一方、ナガノインテリアとは別ブランド「SOLID」の家具を揃えた直営・パートナーショップの立ち上げなど、さまざまな企画が同時進行で動いています。直近では6月に名古屋の栄に「SOLID FURNITURE STORE」をオープン、2020年には大阪にも出店予定があります。関東においても「東京で商品を見られる場所はないのか」というお声を多くいただいております。そう遠くない将来に東京ショールーム開設も視野に入れると、やることは山積みの状況ですので、視界は決して暗くないかな、という認識でおります。

ー 家具を求める消費者の特徴やニーズの変遷はどのように捉えていらっしゃいますか?

ナガノインテリアのリビング家具

あらゆる情報があふれている現在と、15~20年前とでは、消費者の質はまったく異なると思っています。在庫生産の時代、家具の購入といえばメーカーが発売した商品が店頭に並び、その中からお客様が自分の好みのものを選ぶという流れが普通でした。今やすべてのお客様が簡単に情報を手に入れられるようになり、家具のテイストひとつにしても選択肢が格段に増え、自分たちは何が欲しいのかを吟味できるようになりました。
また、これまでの「安かろう悪かろう」から抜け出し、価格に対するデザインや品質の向上を海外製の商品も含めて感じています。国内で一貫生産しているセミオーダー家具の価値をお客様に認めていただくための努力を怠っていては、当社も当然厳しくなるでしょうね。我々がお伝えすべき価値と、お客様のニーズを結びつけるための仕組みを作るといいますか。そういったところに力を注いでいるところです。

ー 今後の取り組みについてお聞かせください。

ナガノインテリアのブランド力を高める活動を行なっていくことですね。当社は福岡・大川・大阪・横浜・仙台にショールームを開設していますが、これまで情報を発信するという点において販売店様に頼り切りだった部分がありました。これからはメーカー側にも自社の強み、商品の魅力を発信し伝える努力が必要です。そのためにもなるべく早いうちに東京エリアのショールーム開設を目指したいと思っております。まだまったくの未定ですが(笑)。まずは現在、営業しながらもリニューアル工事中の横浜ショールームをより魅力ある空間に仕上げることに専念です。

ー 川原プロにとって家具業界で働くやりがいとは?

いち営業マンから所長になり、現在は取締役の重責を担っている立場ですので、個人としてよりもナガノインテリアをどれだけ世間に認知いただけるか、という目線での回答になってしまいますが……。
まだまだではありますが、ここ10数年、会社は社内外のさまざまな人との出会いに恵まれて着実に前進している実感があります。日本を代表する家具ブランドとして一般のお客様の認知を急速に広めるのは容易ではありませんが、プロ認知として業界内100%、誰もが知っている家具ブランドというところまで、ナガノインテリアを押し上げていきたいですね。これから先も15年以上この仕事を続けていると思います。その間にどこまでやれるか、日々生まれる課題と向き合う毎日がやりがいそのものです。

HEYAGOTO’s after talk

ナガノインテリアの家具はソファでもダイニングでも良質な木材を使用しています。それでいて若いお客様でも十分手の届く価格帯というのが本当にすばらしい。お客様に伝えたい情報を発信するプロモーション(販促活動)を一緒に盛り上げていきたいと改めて感じました。

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