数ある枕素材のなかでも古くから親しみのある素材
人工素材から天然素材まで、数々の枕素材があるなか、古くから日本の枕として用いられている素材のひとつに「そばがら」があります。
そばがらとは、皆さんもよく食しているお蕎麦の原料であるソバから、実を取り除いた後に残る殻のことで、そのほとんどが枕の中身として用いられています。そばがら枕は、シャリシャリといったそば殻ならではの音が特徴ではあり、
田舎のおじいちゃんの家の枕
を想像する人も多いのではないかと思いますが、日本国内では奈良時代~平安時代の頃には既に存在していたと言われており、歴史のある寝具として広く使用されてきました。近年はウレタンなど人工素材の枕が登場してきたことや、アレルギーなどが原因でその存在感は薄れつつありますが、
通気性が良く、硬い寝心地の枕が好き
という方にとっては今でも外せない素材ではありますので、根強いそばがらファンからしてみれば、それに代わる素材はないと言えるでしょう。
今回の記事では、そんな「そばがら」にスポットを当て、そのメリットやデメリット、使用感やメンテナンス方法などをご紹介していきます。古くから用いられている天然素材だけに、枕としての機能性はお墨付き。改めてそばがらの魅力を紐解いていきましょう。
なぜ「そばがら」が枕素材として用いられるようになったの?
冒頭でご紹介したように、枕の素材のなかで最も古くから使用されていると言って間違いないのがそばがらです。世間に広く浸透し、愛用されてきた証左でもありますが、
なぜ枕にそばがらが用いられるようになったのか?
は、あまりよく知られていません。結論から言ってしまうと、日本に蕎麦を食べる文化があったから。そばがらは、ソバから実を取り除いた後に残る殻なので、昔から蕎麦を食べる文化があったらからこそ、
その有効活用のひとつ
としてそばがら枕が誕生したと言われています。
そばがらのほかに日本独自の枕素材として知られているのが「いぐさ」です。いぐさは畳の原料で、畳を作る過程で余った端材の有効活用として枕の材料に使用されています。日本は古くからエコロジーな意識が高かったのですね!
「そばがら」や「いぐさ」といった天然素材の枕は、
・天然素材ならではの身体への優しさ
・端材ならではの低価格
などのメリットを活かし、広く国民に浸透した経緯がありました。また、高温多湿の日本においては夏場の暑い時期にお蕎麦をよく食べ、年末には年越し蕎麦を食べる蕎麦文化が根付いているため、それに比例して
そばがらを確保しやすい
という背景もあります。一方、近年ではそばアレルギーに対する影響や畳そのものの減少など、生活スタイルの変化によって需要そのものが後退している傾向にありますので、今後そばがらやいぐさを素材とした枕の生産も、多少なりとも影響を受けるかもしれません。
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そばがら素材の枕のメリット・デメリットを知ろう!
このように、古くから日本文化に根付いていたそばがら枕ですが、そばがら素材のメリットといえば、なんと言ってもその優れた通気性にあります。
黒いダイヤとも言われるそばがらは、品種にもよりますが、1つの殻の大きさは2~3mm程度。その殻が完全に潰れてしまう約3~5年を枕としての寿命と捉えておくと良いでしょう。もちろん、
定期的にそばがらを交換すればいつまでも使えます。
また、そばがらの量を増やしたり減らしたりすることで、硬さの調整が行えるのもメリットのひとつ。硬くしたいならそばがらの量を増やし、柔らかくフィット感を向上させるならそばがらの量を減らすだけ。これと同時に、
そばがらの量で枕の高さ調整も行えます
ので、人工素材の枕にはない高い機能性も持っているのです。
一方で、そばがらのデメリットや欠点についても触れておきましょう。それは
アレルギーをお持ちの方は使用できないこと
食物アレルギーのなかでも重篤な症状が出やすいそばアレルギーは、そばがら枕でも影響が出る可能性が高いため、使用を避ける必要があります。また、天然素材ならではのデメリットではありますが、
虫がわく可能性があること
これは、そばがらに付着し、洗浄によって取りきれなかったチャタテムシという虫の卵がふ化することで発生するようです。人体に影響を及ぼすことはありませんが、気分の良いものではありません。購入時には、防虫加工が施されているか確認すると良いでしょう。
その他、
・そばがらそのものは洗うことができない
・粉が出る可能性がある
・長く使うことでそばがらが砕け通気性が悪くなる
などのデメリットがありますが、そばがらの交換や枕を天日干しすることで回避できます。そばアレルギーの方は使用を避けたほうが安全ですが、そばがらのメリットとデメリットをしっかり理解して、そばがら枕の魅力を存分に味わってみてください。
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