木の種類で、家具の印象は大きく変わる
ナチュラル、重厚感、北欧風…「木の顔つき」で決まる部屋の雰囲気
家具に使われる木材の種類は、インテリア全体の印象を大きく左右します。明るく白っぽい木目のナチュラルウッド(メープルやビーチなど)は、軽やかで清潔感のある空間を演出し、北欧スタイルやミニマルモダンにぴったり。
一方、深みのあるダークブラウン系のウォールナットやチェリーは重厚感と高級感を演出し、クラシカルで落ち着いた空間に仕上がります。
また、木目の表情もポイント。荒々しい年輪がはっきりと見えるオークなどは、存在感があり力強い印象をもたらします。逆に、繊細でやさしい木目のメープルなどは、やわらかく控えめな雰囲気を与えてくれます。同じ家具の形であっても、使われている木の種類や色合いによって、部屋のキャラクターはまるで違うものになるのです。
木は「素材そのものがデザイン」とも言える存在。空間に対する影響力が強いからこそ、自分の好みやライフスタイルに合わせて木の顔つきを選ぶことが大切です。
無垢材・集成材・合板…それぞれの木材の特徴は?
木材には大きく分けて3つの種類があります。それが「無垢材」「集成材」「合板」です。
無垢材(むくざい)
自然の木をそのまま削り出して作られた木材。木目や節など、木が持つ本来の個性を楽しめるのが魅力です。使い込むほどに色が変化したり、風合いが深まるなど「経年変化」を味わえるのもポイント。
一方で、湿度や温度変化による伸縮や反りが起こりやすいというデメリットもあります。
集成材(しゅうせいざい)
複数の小さな木片を接着して再構成した木材で、強度が高く、反りや割れに強いのが特徴です。無垢材に比べて安定性があり、加工もしやすいため、テーブル天板や家具の骨組みなどに多く使用されます。見た目も美しく、価格とのバランスにも優れているため、一般家庭の家具にも広く採用されています。
合板(ごうはん)
薄くスライスした木材(ベニヤ)を、繊維方向を変えて何層にも重ねたもの。軽量で扱いやすく、家具の背面板や引き出しの底など、構造を支える部分や見えない部分によく使われます。コストパフォーマンスに優れており、量産家具にも多く用いられていますが、見た目の質感は無垢材に比べて劣る場合があります。
このように、素材ごとに強みや弱点が異なるため、用途や予算、ライフスタイルに合わせて適材適所で選ぶのが理想です。見た目の美しさを重視するなら無垢材、反りやすさが気になるなら集成材、コスト重視なら合板と、選択の幅が広がることも、木製家具ならではの魅力といえるでしょう。
家具によく使われる木材8種とその個性
木製家具に使われる木材には、それぞれ異なる色合いや木目、硬さ、経年変化の特徴があります。家庭用家具として人気の高い木材を中心に、その魅力と適性をご紹介します。
オーク(ナラ)
力強い木目と高い耐久性で人気No.1
オーク材は、日本では「ナラ」とも呼ばれる木で、重厚感のある力強い木目と高い強度が魅力です。頑丈で耐久性があり、ダイニングテーブルや椅子、収納家具など、日常的に使われる頻度の高い家具に適した素材として広く愛されています。
また、木目がハッキリしているため、空間に自然なアクセントを与え、インダストリアルや北欧スタイル、ヴィンテージ系のインテリアとも相性抜群。塗装やオイル仕上げによっても印象が変わるため、幅広いテイストになじみます。
ウォールナット
深みのある色合いで空間を引き締める“主役級の木”
ウォールナットは、濃い茶色から黒に近い色までを含む独特の色合いで知られ、家具に高級感と存在感をもたらします。特に無垢材のウォールナットは、時を経るごとに艶やかな風合いへと変化し、まるで家具が育っていくような感覚が味わえるのも魅力のひとつです。
テレビボードやローボード、ベッドフレームなど、空間の印象を左右する大型家具によく用いられ、シンプルなデザインでも主役級の佇まいを演出してくれます。
メープル
やさしい色合いと滑らかな手触りで、癒しの空間にぴったり
メープル材は、明るく淡いベージュ~クリーム色の柔らかな色味が特徴。肌触りが非常になめらかで、触れるたびにあたたかさと優しさを感じる木材です。家具に使うと、空間全体が明るく、やさしい雰囲気に包まれます。
衝撃にも強く、弾力性があるため、ベビーベッドやキッズ家具、ナチュラル系インテリアに多く使われています。また、塗装による着色も映えるため、デザインの幅が広いのもポイントです。
チェリー(アメリカンチェリー)
育つように色づく、経年変化が楽しめる木材
チェリー材の家具は、経年で色味が徐々に深まり、赤みを帯びた味わいある表情へと変化していきます。最初は明るく淡い色ですが、日光や空気に触れることで濃い赤褐色へと変化するため、「育つ家具」を楽しみたい人におすすめ。
木肌がなめらかで光沢があり、非常に手触りが良いのも特長。ドレッサーやチェストなど、長年大切に使いたい家具に最適です。
パイン
節が愛らしい、カジュアルであたたかみのある木
パイン材は比較的柔らかく、加工がしやすい木材。木目に特徴的な節が多く現れることから、カントリー調やナチュラルインテリアの代名詞とも言えます。明るい黄色〜飴色に変化する経年変化も魅力のひとつ。
リーズナブルな価格帯の家具に多く、子ども部屋やセカンド家具、DIY用素材としても人気があります。自然素材ならではの素朴さが、暮らしの中にあたたかみをもたらします。
ビーチ(ブナ)
やわらかで明るいトーン。北欧家具の定番素材
ビーチ材は、北欧家具でよく使われる木材で、均一で細やかな木目が美しく、淡くピンクがかったナチュラルカラーが魅力。硬くて丈夫な反面、しなやかさも持ち合わせており、曲木加工にも適しているため、カーブのある椅子やベッドなどのデザインにも多く使われます。
北欧デザインのインテリアが好きな方におすすめの木材です。光を柔らかく反射するような明るい質感は、圧迫感のない開放的な空間づくりに向いています。
杉・檜(すぎ・ひのき)
香りの良さと軽やかさで、和家具や癒し空間に最適
日本を代表する木材である杉と檜は、調湿性や抗菌性に優れ、香り高いのが特徴。とくに檜はヒノキ風呂に象徴されるように、森林浴をしているかのようなリラックス効果があります。軽くて柔らかく、手触りも良いため、和風家具や子ども用家具、収納用品などに多く使われています。
とくに無垢材の杉・檜は、木の温もりと呼吸を感じられる素材。見た目だけでなく機能面でも暮らしを豊かにしてくれる木材です。
木の使われ方と選ばれ方──部位や家具ごとに違う「適材適所」
家具は、使用する木材によって耐久性や重量、デザイン性が大きく左右されますが、実は「どの部位に、どんな木を使うか」という点にも奥深い工夫があります。家具の部位ごとに適した木材の特徴を解説します。
天板や脚は、重さと耐久性のバランスが鍵
テーブルやデスク、チェストなどの天板は、日常的に物を置いたり手をついたりするため、耐久性が高く、反りや割れが起きにくい材が適しています。具体的には、オークやウォールナット、ビーチなどの中〜高硬度の広葉樹が多く用いられます。
また、脚部は家具の安定性の要として、耐荷重性や形状の維持性が重要になります。天板同様、脚にもオークやメープルのように重くて丈夫な木材が適しており、ときには強度とコストのバランスをとるために、集成材やラバーウッドが選ばれることもあります。
とくに椅子やベンチなど、人の体重をしっかり支える構造には、加工性が高く、衝撃にも強いビーチ材やブナ材が多用され、長く使ってもがたつかない設計が求められます。
棚板や背面では軽くて扱いやすい材が活躍
一方、棚板や引き出しの底板、家具の背面パネルなどには、軽量で加工しやすい木材や合板が多く使われます。これらの部位は構造的な負荷が少ないため、必ずしも高硬度の無垢材である必要はなく、杉や桐、MDF(中密度繊維板)やラワン合板などが使われることが一般的です。
とくに桐(きり)材は、軽量で防虫性・吸湿性にも優れていることから、引き出し内部や和家具の内部材として長年重宝されてきました。軽い素材を使うことで、開閉のしやすさや家具の移動のしやすさにもつながるという利点があります。
また、見えない部分にコストを抑えた素材を使用することで、全体の価格バランスを保ちながら、外観と実用性を両立させる工夫もなされています。
「家具全体の設計」から木を選ぶという視点
家具に使う木材は、単に美しさやブランドで選ぶのではなく、「どの部位に、どのような特性の木材が適しているか」を考えることで、より使いやすく、長く付き合える家具に出会うことができます。
たとえば、「オークの天板+ラバーウッドの脚+合板の棚板」という構成の家具は、耐久性・コスト・軽さのバランスが非常に優れているため、家庭用のデスクや収納棚として非常に人気があります。
素材の性質を活かして組み合わせていくことで、見た目にも機能的にも満足できる家具が生まれる──。これが、家具づくりの“適材適所”という考え方です。
木のことをもっと知ると、家具選びが楽しくなる
木目のクセ・色合いの違いを愛せるようになる
家具に使われる木材は、ひとつとして同じものがありません。木目の模様、節の入り方、色の濃淡――どれもその木が自然の中で育ってきた証です。たとえば、同じオーク材であっても、ある板はまっすぐな年輪が美しく整っている一方、別の板には大胆なうねりや節が現れることもあります。
こうした個体差やクセを知っておくと、家具選びがぐっと楽しくなります。「木目が細かくて落ち着いた印象がいい」「節がある方が自然で好き」「色合いのグラデーションが味わい深い」など、自分の好みに合った1点を探す楽しさがあるのです。
また、量産の工業製品にはない「個性」を持つ木の家具は、インテリア全体に温もりや表情をもたらします。「この節があるからこそ味がある」「この色むらが愛おしい」と思えるようになると、日々の暮らしにも少しずつ豊かさが増していくでしょう。
「育つ家具」──経年変化を味わえる素材の魅力
天然木の家具には、「時を重ねることで美しく変化していく」という特別な魅力があります。これを「経年変化(エイジング)」と呼び、木材の種類によってその様子はさまざまです。
たとえばチェリー材は、使い始めは淡いピンク色に近い風合いですが、年数を重ねることで深みのある赤褐色へと変化していきます。これは光や空気に触れることで起こる自然な現象で、使い続けることで「家具が育っていく」ような感覚を楽しむことができます。
ウォールナットも徐々に色が明るくなっていく性質があり、時間とともに異なる表情を見せてくれます。こうした経年変化は、人工的な素材にはない天然木ならではの魅力。使い手の暮らしとともに変わる家具は、家族の思い出と共に深みを増していきます。
天然木のメンテナンスは難しい?
「天然木の家具は手入れが大変そう」と思われがちですが、実はそれほどハードルは高くありません。日常的なお手入れとしては、乾拭きや柔らかい布での水拭きをするだけで十分。乾燥が気になる季節は、オイルやワックスを塗ることで木の潤いを保つこともできます。
とくにオイル仕上げの家具は、自分でメンテナンスをしながら育てていく楽しさがあります。小さなキズや染みも「味」として受け止められるのが天然木の良さ。汚れや凹みが気になる場合でも、軽くサンディングして再塗装すれば、元通りの風合いを取り戻せるのも魅力です。
一方で、ウレタン塗装などで保護された家具は、耐水性・耐汚性に優れており、よりカジュアルに扱うことができます。つまり、天然木の家具は「難しい」のではなく、選び方と使い方次第で、自分の暮らしに寄り添ってくれる存在なのです。
まとめ:“好き”と“使いやすさ”で家具を選ぼう
家具選びに正解はありません。価格の高低や有名ブランドかどうかよりも、自分の暮らしや価値観にフィットするかどうかが、最も大切な判断基準です。
木材には、それぞれ異なる個性や表情があり、どれを選ぶかによって部屋の印象は大きく変わります。ナチュラルで明るい雰囲気を目指すならメープルやビーチ、落ち着いた高級感を求めるならウォールナット、素朴であたたかみのある空間にはパインや杉……と、“好き”という直感が最初の一歩になります。
一方で、家具は日々使うもの。天板の硬さ、脚の安定感、メンテナンスのしやすさなど、使いやすさの観点も無視できません。部屋の広さ、使う頻度、家族構成などに応じて、「どこに、どんな家具を置くか?」をイメージして選ぶことが、暮らしを快適にしてくれます。
そして、何よりも大事なのは、「10年後も、この家具でよかった」と思えること。経年変化で風合いを増す天然木の家具は、時間とともに自分の暮らしに馴染み、愛着が深まっていきます。たとえ小さな傷がついても、それは“思い出”という価値に変わっていくのです。
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木材について少し知識があるだけで、家具選びはぐっと豊かになります。「木の違い」を感じられる人は、「暮らしの変化」にも敏感な人。そんな視点を持ちながら、自分にぴったりの家具と出会ってみてください。日々の暮らしに、きっと新しい喜びが生まれます。