伝統工芸の街とふさわしい高い技術を持った生産拠点
ダシュテ・キャヴィール(キャヴィール砂漠、キャビール砂漠)とキャヴィーレ・ルート(ルート砂漠)の間にぽつんと置かれたオアシス都市タバス。近年タバスはナイン絨毯の個ポーを数多く産する絨毯産地として知られるようになりました。デザインのほとんどはナインのメダリオン文様を模したもので、経糸と横糸に綿、パイルにウール、場合によっては絹のアクセントを使った左右非対称結びで織られているあたりはナインと同等ですが、上質な織りで定評のあるナインに比べ、太い糸を用いた粗い織りのものが多く、ナインの格安品として取り扱われることがあります。ナインは、ペルシャ絨毯 5 大産地の一角としての地位を確立していますが、その高い技術を持った職人が確保できるかがタバスの課題と言えます。
イランのほぼ中心部にあるヤズド州に属するタバス郡は、町中にサファヴィー朝やアフシャール朝などのたくさんの霊廟があり、交通の便こそ悪いものの観光地的なスポットが多数あります。ただし、夏は酷暑となり、年間の雨量もごくわずかという厳しい環境のなか、ペルシャ絨毯の伝統的なデザインであるメダリオン・デザインが多く生産されています。主要都市でないゆえに、その技術力としては粗削りな部分があるものの、鮮やかな色使いの独特なペルシャ絨毯にはそれなりの魅力があります。
タバス産のペルシャ絨毯デザイン紹介
メダリオン・デザイン(トランジ)Medallion designn
コーナーにメダリオンの派生柄をもたないメダリオン絨毯は、単にメダリオン・デザインと呼ばれることがあります。ちょうど総柄デザイン(アフシャーン)絨毯の中央にメダリオンのみを配したデザインです。このほか、遊牧民がつくる幾何学文の絨毯ではメダリオンがいくつか並んだようなポール・メダリオンと呼ばれるタイプのものも見られます。