伝統にとらわれず、常に新しいデザインを追求する街
その昔ゾロアスター教の聖地であったクムは、イスラム勢力が蔓延した9世紀、十二イマーム派第8代イマーム・レザーの妹ファーティマが祀られることによってシーア派モスリムの重要な聖地となりました。
この敬虔なイスラム教徒の街で絨毯づくりが始まったのは、1930年頃のことです。1960年代に入り、部分的に絹を使った絨毯が表れ、やがてオールシルクの製品が作られるようになって、クムの人気はヨーロッパでも急上昇しました。新興の産地であるため、そのデザインも斬新なものがあり、意欲的な工房が多く、シルクの風合いを生かした華麗な絨毯が数多く作られています。
クム(コム)は、日本語読みをゴムとも読みます。
下記デザインサンプルにもありますように、新興都市ならでは伝統に捉われない常に新しいデザインを追求している町がクムです。中央にメダリオンを配置していないデザインが多いのが特徴です。
クム(コム)産のペルシャ絨毯デザイン紹介
ストライプ・デザイン(モハッラマート)Stripe design
英語でストライプ、ペルシャ語でモハッラマートとは、縞を意味し、フィールドにたて縞が反復されるデザインです。もともと平織りのたて糸の色が変えられた織り柄パターンから生まれた意匠なのでしょうが、中間に様々なモチーフを配したりストライプのパターンをアレンジしたりして、徐々に精緻さを増し、絨毯のデザインとしても発達してきました。
パネル・デザイン(ヘシュティー)Panel design
庭園文が様式化されてできたといわれるデザインです。もともとは水路で区切られた庭園描写が、時とともに細かい区画に分けられるようになり、やがて格子の中には様式化されたいろんな植物文がはめ込まれるようになったもので、英語ではパネル・デザイン、ペルシャ語ではヘシュテ ィー(ヘシュトは日干しレンガの意)と呼ばれるデザインです。
メダリオン・デザイン(ヌーリー工房)Medallion design
コーナーにメダリオンの派生柄をもたないメダリオン絨毯は、単にメダリオン・デザインと呼ばれることがあります。ちょうど総柄デザイン(アフシ ャーン)絨毯の中央にメダリオンのみを配したデザインです。このほか、遊牧民がつくる幾何学文の絨毯ではメダリオンがいくつか並んだようなポール・メダリオンと呼ばれるタイプのものも見られます。