伝統工芸の街とふさわしい高い技術を持った生産拠点
中央ペルシャの都市カシャーンは、古くからの工芸の街として知られ、タイルや陶器、絹織物がつくられていました。サファヴィー朝当時につくられた教に伝わる名品絨毯も数多く、おおいに評価され、「カシャーンからやってきた人」という言葉が絶大な賛辞に値するという事からもうかがえます。しかし、現代のカシャーン絨毯は良品には属するものの、他の産地のような発展は見せず、伝統的な色使いと構図のものが、ただ作り続けられている感があります。デザインとしては、菱形メダリオンの伝統的なラチャク・トランジや全面アラベスクのアフシャーンなどが中心です。
カシャーンは、伝統を重んじることで知られており、ある意味オーソドックスな色柄のデザインが多いという見方もありますが、カシャーンならではの赤やベージュを基調とした鮮やかなペルシャ絨毯はいまなお健在です。日本でもこの産地が知られていることを考えても、製品の質の良さや技術力の高さがうかがえます。
カシャーン産のペルシャ絨毯デザイン紹介
メダリオン・コーナー・デザイン Medallion-corner design
ペルシャ絨毯のもっとも典型的な意匠がこのメダリオン・コーナ ー・デザイン、ペルシャ後でいうラチャク・トランジです。
クルアーン(コーラン)や写本の装丁に由来するとともに、宇宙をシンボライズした意匠とも、さまざまな解釈がなされます。中央にメダル様の大きなメダリオンがあり、各コーナーにメダリオンの4分の1のパターンが配されているのが基本形です。
オーヴァーオール・デザイン(アフシャーン)
オーヴァーオールすなわち総柄のデザインです。ペルシャ語ではアフシャーンと呼ばれています。メダリオンやメフラーブのような構図をもたず、フィールドと呼ばれるボーダーより内側の部分全体をアラベスクや花柄などが展開されるデザインです。あるモチ ーフが反復して配置されているものは、一般にアフシャーンとは呼びません。