岐阜県 高山市周辺飛騨家具
飛騨家具の成り立ちは「飛騨の匠」を抜きにしては語れません。
「飛騨の匠」とは、奈良時代から平安時代にかけて全国各地に派遣されていた木工職人のこと。律令制度による厳しい労働条件のもとで、延べ数万人とも言われる職人たちが、東大寺、法隆寺などの寺院建築や、平城京、平安京などの都市造営に携わり、その技術を磨いてきました。
その高い技術力は国内で称えられ、彼らは「飛騨の匠」と呼ばれるように。役目を終えて飛騨に戻った匠たちは、飛騨高山の町造りや、全国各地の文化を取り入れた独創性のある建築物、茶道具、漆器など、多くのジャンルで木工技術を存分に発揮していきました。
飛騨家具の最大の特徴は、「曲木」の技術で表現された、しなやかで美しいフォルム。「曲木」とは、無垢材を蒸気で蒸し上げて、水分を多く含んだ状態で曲げる技術のことで、1920年、飛騨高山を訪れていた二人の旅人から伝えられました。
曲木の技術を聞いた町の有志が、資金を出し合って起業したのがきっかけで、飛騨の豊富なブナ資源を生かした家具造りが発展。戦後に生活様式が洋風に変わり、チェアやテーブルなどの需要が急増すると、飛騨家具は「脚もの家具」の代表的産地として注目を集めるようになりました。
飛騨家具は、近年、スギを使った圧縮技術の研究や、海外の著名デザイナーとのコラボレーションなど、新たな試みを行い、メディアからも注目を集めています。現在も、技術、デザイン、経営などの面で改革に積極的に取り組み、新たな可能性にチャレンジし続ける姿勢は、1300年以上昔に遡る「飛騨の匠」の心意気そのものです。